動作原理
周波数の生み出し方法
高周波発電機の場合、固定子側の励磁コイルに電気が流れることで磁束を形成し、誘導子側の磁極にNとSの両極が発生します。この誘導子側が回転することで固定子側の電機子コイルとの間に磁気抵抗が生まれ電力が作り出されるわけです。生み出された電力の周波数fは、誘導子側の磁極数pと回転数nの積で決定されます。
そのため、高い周波数を出すには誘導子が高速の回転をするか、誘導子の磁極の数を極力多くするかになります。ただ、回転においては発電機全体の機械の強度、高速回転時のバランスなどの問題で限度があります。一方誘導子の磁極の数は回転する側の円周を大きくして、できるだけ外周に多くの磁極を付けることで高い周波数を生み出すことができますが、こちらも回転数とのバランスの問題があります。
こうした課題をクリアして理想的な高周波発電機としたものが、テレフンケン社とAEG社の設計、製造された装置です。
磁極と回転数
依佐美送信所に設置された高周波発電機の周波数は以下の式により算出されます。
f = n / 60 x p
設置された発電機の回転数nは毎分1360回転、磁極pの数は256で、分当たりを毎秒にするため60で割ります。計算したfの値は5800Hzの周波数となります。しかし、この周波数では必要としている周波数の17.4kHz(17400Hz)に届かないため、トリプラーと呼ばれる逓倍装置で5800Hz を3倍にして目的の周波数にします。
トリプラー(周波数変更器)
高周波発電機により発生した高周波は周波数を高める「逓倍回路」、モールス信号を発生する「信号回路」、そして空中に電波伝搬させる「アンテナ回路」を経て発信していきます。この中で、逓倍回路は蓄電池やバリオメーター、トリブラーなどで構成されています。
高周波発電機で得られた5800Hzの周波数は一次回路用のバリオメーターを経て、トリブラー(周波数変更器)に流れます。トリブラーとは油冷式の鉄心入りのトランスで、ここに高周波発電機の出力を加え飽和磁気させ3倍の高調波(17.4kHz)を発生させます。運転開始時には直流の大電流を流して起動します。その後二次回路のバリオメーターなどを通過し、信号回路の電鍵のオン・オフ(Keying)でモールス信号をのせた電波(長波)はアンテナ回路の空中線結合コイル、ローディングコイルなどによってアンテナへと導かれます。