依佐美送信所

愛知県刈谷市(旧:碧海郡依佐美村)の依佐美送信所は日本初の対ヨーロッパ無線通信施設として、IEEEよりマイルストーンに認定されました。

依佐美送信所とは?

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依佐美送信所の設備

長波によるモールス信号での情報送信が目的

電流の断続操作により情報(モールス信号)が送れることは1830年代にアメリカで発明され、有線での信号伝達が主流となりました。1895年(明治28年)にはイタリアのマルコーニが電波を応用して信号を送れる無線通信に成功し、やがて大西洋などを横断することが可能なほどの出力を持つようになりました。
わが国でも1897年に無線通信に成功し、1905年には日露戦争時において無線通信を利用しています。その後、外交や通商などで国際間、特にヨーロッパやアメリカとの情報のやりとりが増えるに従い、無線通信の必要性が日増しに高まっていったのです。

※無線による通話、無線電話は1907年に米国で、1912年に日本で成功しましたが、 当時の技術では安定的に遠距離通信を行うことが難しく国際通信の主流にはまだなっていませんでした。

ヨーロッパへは長波の通信が最適

当時利用されていたのは長波が主流で、短波はまだ安定性が低く国際通信に使用できないといわれていました。長波の特性は、地球の表面に沿って非常に遠くまで届く性質があり、長距離の通信には適していたのです。一方で大きな出力や大規模なアンテナを必要としました。

※短波は、長波と違い地表面ではなく大気中の電離層に反射して地球の裏側まで伝わる性質があります。依佐美送信所が完成し数年経った頃に短波通信技術は確立し、国際通信に利用されるようになりました。

世界最先端の高周波発電機

通信に適する17.4kHzの長波を発するために、ドイツテレフンケン社の設計で、AEG社製造の発電機を導入することになりました。全体が38トン、回転部分21トン(2006年の分解時の実測値)という巨大なもので、これは高速で回転することで安定した周波数を出力するのに必要でした。ドイツ製が選ばれたのは、高性能であると共に第一次世界大戦の賠償金を充てることが可能であったためといわれています。

発電からアンテナまで

高周波発電機の駆動は、外部の商用電源からまず送信所内の三相誘導電動機(交流)を動かし、これを直流発電機に直結してさらに直流電動機と結び高周波発電機に結合させていました。こうした複雑な構成となったのは、高周波発電機の回転数制御を安定したものにするためで、その前段階の直流発電機の電力を制御する必要があったためです。 高周波発電機からは蓄電器やバリオメーター、トリプラーなどで構成された逓倍回路を通り、通信の要となる電鍵回路からアンテナへと送られました。