依佐美送信所

愛知県刈谷市(旧:碧海郡依佐美村)の依佐美送信所は日本初の対ヨーロッパ無線通信施設として、IEEEよりマイルストーンに認定されました。

依佐美送信所の真実

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依佐美送信所にまつわる都市伝説。何が本当で何が噂? 刈谷市郷土文化研究会 鈴木哲先生が「依佐美送信所の謎」をひも解きます。

依佐美送信所の真実 その1

「ニイタカヤマノボレ」は送信された?

真珠湾攻撃暗号電報「『新高山登レ一ニ〇八』(ヒトフタマルハチ」の送信が伝えられるのは、依佐美のほか千葉県の船橋送信所と長崎県佐世保市の針尾送信所である。なおカタカナで「ニイタカヤマノボレ」は間違いで正確には漢字使いで「新高山登レ一ニ〇八」である。
針尾は今日ほぼ否定され、船橋から短波と中波が、依佐美から潜水艦向け超長波が送信されたと考えられる。
潜水艦の日誌に「東通の超長波17.44KCは深度17mにて受信」とある。
電報は1941年12月2日に岩国市柱島沖合の旗艦「長門」から有線で東京霞ヶ関の東京通信隊(東通)に送信され、同所から船橋と依佐美から「中継」された。

依佐美送信所の真実 その2

無線塔は青島から移設された?

古くから中国・青島から移設されたという説が伝わるが、日本無線電信が設計、石川島造船所が製造しており、風聞にすぎない。
第一次世界大戦で日本がドイツの租借地であった青島を占領して戦勝国となったことによる誤解と考えられる。

依佐美送信所の真実 その3

送信所はドイツからの賠償金で建てられた?

建設費用550万円のうち、ドイツからの賠償金は無線機購入費の一部である23万5千円(一説には70万円)あまりで、総額の4%(あるいは13%)にすぎない。

依佐美送信所の真実 その4

無線塔は「世界一」で「東洋一」?

送信所の規模は「メーターアンペア」で測られる。実効高200m(鉄塔250m)、最大電流750アンペアの15万メーターアンペアで、ナウエン局8万メーターアンペアを上回り「世界一」だった。
また、パリのエッフェル塔(1889年)の312mには及ばないものの、当時「東洋一」といわれた原ノ町送信所の200mを上回った。東京タワー(333m)が建設される1958年まで「東洋一」の高さを誇っていたのである。

依佐美送信所の真実 その5

送信所タイムカプセルがある?

1989年に開局60周年を記念して電子情報通信学会東海支部が「対欧無線通信発祥地」の石碑を本館南西に建立した。その隣地に送信所記録を収納したタイムカプセルが埋設され、同支部創立100周年にあたる2039年に開かれることになっている。

出典:
『かりや』第24号(2003年)所収・鈴木哲「依佐美送信所五〇の謎」