依佐美送信所記念館
静態保存で在りし日の送信所の姿を伝える
戦前対欧無線の拠点として、そして太平洋戦争中は艦艇への通信基地としての施設であった依佐美送信所。同所にはその重要性から長波の発信機である高周波発電機などが現用及び予備用として2対設置されていました。2006年の解体時にはこのうちの一組を新たにできる記念館で保存することが決まりました。記念館外観は、旧送信機室を模したもので、内部にはこの高周波発電機をはじめ、ローディングコイル、制御盤など旧送信所の設備の8割が静態保存されてます。
世界2カ所しかない機械(グリムトン送信所との比較)
依佐美送信所が建設された当初の長波による送信所で設備などが現存しているのは、こことスウェーデンのグリムトン送信所だけとなりました。同じ長波の送信でも、グリムトンは高回転ですが出力の小さいタイプで鉄塔の高さは127m。構造も依佐美のものとは異なっていました。依佐美は高出力の大型タイプで遠距離に適したものだったのです。グリムトンは現在も電波を発信できる動態保存で、ユネスコの世界遺産に認定されています。
多くのボランティアの方の熱意に支えられて
地元では「無線」、「依佐美の無線塔」などと親しまれ、新幹線からもよく見えた8本の鉄塔がそびえ立つ依佐美送信所。解体時には保存運動がおきるほどで地元の人も一抹の寂しさを感じたようですが、市側の協力により記念館として再出発したのです。こうした経緯もあって、記念館には送信所で働いていた方、あるいは長年地元に住んでいらっしゃる方などがボランティアとして登録され、訪問者に対して送信所の働き、実績、構造などの説明をされています。訪問時にはじっくりとお話を聞いてみたいものです。